日本臨床微生物学会

ガイドライン・提言

VIII.国立感染症研究所で実施する病原体等の解析

国立感染症研究所細菌第二部
山根 一和
荒川 宜親

国立感染症研究所は厚生労働省の感染症対策の為の試験研究機関であり、一般の機関からの依頼に応じて病原体や多剤耐性菌などに関し検査や解析をする機能はありません。ただし、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下、感染症法)で規定されている病原体や薬剤耐性菌、食品衛生法で指定されている臨床上または公衆衛生上問題となる病原細菌などについて、必要に応じて表1(52KB)に示す3種類の検査や試験、詳しい解析などを実施しています。

1)行政検査による解析

感染症法などで規定されている耐性菌や病原体、それらによるアウトブレイクが発生した場合などで、厚生労働省や地方自治体が行政的な対応が必要と認めた場合に行われる検査です。感染症法や食品衛生法、検疫法、学校保健安全法やそれらの施行規則等に則り、個々の機関から保健所等に届け出がされた場合、地方自治体等で審査し、詳しい検査や解析が必要と認められた場合には、先ず地方衛生研究所で検査を行います。地方衛生研究所で対応ができない特殊な病原体や感染症の場合、国立感染症研究所に詳しい解析や最終確認などが依頼されます。この際、国立感染症研究所への依頼は地方自治体(知事または地方衛生研究所 所長)が国立感染症研究所の所長宛に行います。厚生労働省が必要と認めた場合は、担当課などから、事務連絡や課長通知に基づいて検査が実施されます。検査にかかる費用は、原則として、公費が充当され、届け出をした機関側に負担が求められることはありません。

2)依頼検査による解析

特定の病原体による感染症などが発生した場合で、個々の機関が自力で対応できない場合等に国立感染症研究所に依頼する検査です。検査の依頼は各機関の長で、国立感染症研究所の所長宛に行います。依頼内容を国立感染症研究所内で審査し、検査や解析をお引き受けするか否かを決定するため、依頼されたすべてについて対応するわけではありません。さらに、検査にかかる費用は依頼機関側から、国庫に納付していただく必要があります。検査費用は、必要な消耗品費、施設/備品の原価消却費、人件費などを考慮して個別に算定されます。

3)共同研究による解析

感染症が発生した際に、個々の機関では自力で対応ができないが、学術的にも公衆衛生上も重要であると考えられる場合に実施される、詳しい検査や解析です。この場合、国立感染症研究所の研究者が獲得している競争的研究費や所の研究事業費などにより、「共同研究」という形で検査や解析を実施することになります。このため、経費は無料ですが、将来的に、検査結果については、感染症の関連学会や学術雑誌などでの発表を目指して頂くことを前提としています。検査や解析を依頼する場合は、各機関の長や所属部署の長(管理者、責任者)が、国立感染症研究所の担当部長宛に行います。依頼を受けたのち、担当部内で検討し、必要かつ可能と判断された場合に検査をお引き受けします。その場合には、共同研究の実施に関する契約書などを交わします。細菌第二部で行う薬剤耐性菌の解析については、「菌株解析依頼状(様式例)」(別紙 (112KB))を菌株に添付していただくことが必要です。菌株の輸送は、感染症法などで指定された方法に従い、輸送費用は、各機関側で負担できない場合は、国立感染症研究所側で負担することは可能です。公費により解析した菌株は、国立感染症研究所に帰属し、公衆衛生の向上のために将来的に活用できるように国立感染症研究所で長期間保管されます。

(2010.11.25更新)

最終更新日:2021年11月4日
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