日本臨床微生物学会

学会について

医学系研究の利益相反に関する指針

目的

 日本臨床微生物学会は「臨床微生物学と感染症検査に関する学術研究及び技術の進歩発展を図り、もって国民の健康増進及び公衆衛生の向上に寄与する」ための事業活動を展開している。この指針は、日本臨床微生物学会における役職者(役員、委員等)、事務職員等を対象とし、第三者組織・団体との利益相反(COI)状態を適切に管理することにより、信頼性と公正性を確保し、本会事業活動の推進を図ることを目的とする。

対象者

COI状態が生じる可能性がある以下の対象者に対し、本指針が適用される。

  1. 本学会会員
  2. 本学会の学術講演会などで発表する者(非会員も含む)
  3.  本学会の役員(理事長、理事、監事)、学術講演会担当責任者(会長など)、各種委員会の委員長、特定の委員会(学術集会運営委員会、診療ガイドラインなどの策定にかかる委員会、学会誌編集委員会、倫理委員会、医療安全委員会、利益相反委員会など)委員、暫定的な作業部会(小委員会、ワーキンググループなど)の委員
  4. 本学会の事務職員
  5. 1~4の対象者の配偶者、一親等の親族、または収入・財産を共有する者

対象となる活動

 本学会が行うすべての事業活動に対して本指針を適用する。

  1. 学術講演会(年次総会含む)などの開催
  2. 学会機関誌、学術図書などの発行
  3. 診療ガイドラインなどの策定
  4. 研究および調査の実施
  5. 研究の奨励および研究業績の表彰
  6. 認定医・認定技師および認定施設の認定
  7. 生涯学習活動の推進
  8. 関連学術団体との連絡および協力
  9. 営利を目的とする団体・企業等との連携および協力
  10. 国際的な研究協力の推進
  11. 社会に対する感染症学の進歩と普及及び医療への啓発活動
  12. その他目的を達成するために必要な事業(例、臨時に設置される調査委員会、諮問委員会などでの作業など)

 特に、下記の活動を行う場合には、所定の様式に従って、発表時には発表内容に関連する企業との過去3年間におけるCOI状態が所定の様式に従い開示されなければならない。

  1. 本学会が主催する学術講演会(以下、講演会など)などでの発表
  2. 学会機関誌などの刊行物での発表
  3. 診療ガイドライン、治療指針、マニュアルなどの策定
  4. 当該分科会の事業活動と関係のない学術活動や講演会、座談会、ランチョンセミナー、イブニングセミナーなどでの発表

 但し、企業主催・共催の講演会等については、座長/司会者も講演者と同様にCOI状態の開示を行う。
 なお、発表演題に関連する「医学系研究」とは、医療における疾病の予防方法、診断方法および治療方法の改善、疾病原因および病態の理解ならびに患者の生活の質の向上を目的として実施される基礎的並びに臨床的研究であって、倫理審査の対象となる医学系研究をいう。

COI自己申告の項目と開示基準

 対象者は、申告者個人および申告者の所属研究機関そのもの、或いは過去に共同研究者、分担研究者の関係、或いは現在そのような関係にある所属研究機関・部門の長となる。
 個人のCOIは、以下の1~9の事項で、開示基準額を超える場合に、所定の様式に従って申告するものとする。
 なお、COI自己申告に必要な金額は、以下のごとく、各々の開示すべき事項について基準を定めるものとする。

  1. 医学系研究に関連する企業・法人組織や営利を目的とした団体(以下、企業・組織や団体という)の役員、顧問職については、1つの企業・組織や団体からの報酬額が年間100万円以上とする。
  2. 株式の保有については、1つの企業についての1 年間の株式による利益(配当、売却益の総和)が100万円以上の場合、あるいは当該全株式の5%以上を所有する場合とする。
  3. 企業・組織や団体からの特許権使用料については、1つの権利使用料が年間100万円以上とする。
  4. 企業・組織や団体から、会議の出席(発表、助言など)に対し、研究者を拘束した時間・労力に対して支払われた日当(講演料など)については、一つの企業・団体からの年間の講演料が合計50万円以上とする。
  5. 企業・組織や団体がパンフレット、座談会記事などの執筆に対して支払った原稿料については、1つの企業・組織や団体からの年間の原稿料が合計50万円以上とする。
  6. 企業・組織や団体が提供する研究費については、1つの企業・団体から、医学系研究(共同研究、受託研究、治験など)に対して、申告者が実質的に使途に決定し得る研究契約金の総額が年間100万円以上のものを記載する。
  7. 企業・組織や団体が提供する奨学(奨励)寄附金については、1つの企業・団体から、申告者個人または申告者が所属する講座・分野または研究室に対して、申告者が実質的に使途を決定し得る寄付金の総額が年間100万円以上のものを記載する。
  8. 企業・組織や団体が提供する寄附講座に申告者らが所属している場合とする。但し、申告者が実質的に使途を決定し得る寄付金の総額が年間100万円以上のものを記載する。
  9. その他、研究とは直接無関係な旅行、贈答品などの提供については、1つの企業・組織や団体から受けた総額が年間5万円以上とする。

 但し、開示基準1「企業や営利を目的とした団体の役員、顧問職」とは、研究機関に所属する研究者が特定企業の役員、顧問職に就任し、契約により定期的にかつ継続的に従事し報酬を受け取る場合を意味しており、相手企業からの依頼により単回でのアドバイスなどの提供は開示基準4「企業や営利を目的とした団体より、会議の出席(発表、助言)に対し、研究者を拘束した時間・労力に対して支払われた日当、講演などの報酬」として申告すること。
 さらに、6、7については、すべての申告者は所属する部局(講座、分野)あるいは研究室などへ関係する企業や団体などから研究経費、奨学寄附金などの提供があった場合に申告する必要がある。
 なお、企業などから提供される研究費・寄付金に係る判断基準額については、申告者が実質的に使途を決定し得る金額を申告すると明確に示した。申告された内容の具体的な開示、公開の方法については所定の様式に従う。

利益相反管理の実施方法

1.    会員の責務
 会員は医学系研究成果を学術講演などで発表する場合、発表者のすべては当該研究実施に関わるCOI状態を発表時に、本学会の所定の書式で適正に開示するものとする。研究などの発表との関係で、本指針に反するとの指摘がなされた場合には、当該会 員はその趣旨を理解し全面的に協力しなければならない。理事会(理事長)はCOIを管轄する委員会(以下、利益相反・倫理委員会と略す)に審議を求め、その答申に基づき、妥当な措置方法を講ずる。
2.    役員などの責務
 本学会の役員(理事長、理事、監事)、学術講演会担当責任者(会長など)、各種委員会委員長、特定の委員会委員、および作業部会の委員は本学会に関わるすべての事業活動に対して重要な役割と責務を担っており、当該事業に関わるCOI状態については、就任する時点で所定の書式にしたがい自己申告書(就任時の前年から過去3年間)を提出しておかなければならない。就任時の年、或いはその後、新たにCOI状態の変更が生じた場合には、8週以内に様式によって追加申告を理事長宛に行うものとする。理事長は当該事業の公明性、中立性を確保するため、役員等の人事に関して適切に管理しなければならない。
 すべての役員・委員は就任時にCOI自己申告書の提出が義務付けられる。また、査読にかかわる編集委員あるいは査読者もCOIマネージメントの対象者として含められる。基本的には、査読を依頼する場合、投稿論文筆者との間にCOI状態があるか否かの判断は査読候補者に委ねるべきで、査読結果に対してCOIの説明責任が果たせないと判断した場合には辞退を可能とする。学術講演や学術雑誌による研究成果の情報発信は社会還元への大きな道筋であり、それらが公明性、中立性を担保しているかどうかの説明責任は、最終的に理事長が果たさなければならない。

委員会の設置

 本会は、COI管理のため、利益相反・倫理委員会(以下「委員会」という。)を置く。

利益相反・倫理委員会の組織

 委員会は、次に掲げる委員をもって組織する。
    第1号 委員長 1名
    第2号 委員 若干名
 前項第1号の委員長は、会長が指名する。
委員長は、委員会を招集し、その議長となる。
委員長に事故があるときは、委員長あるいは理事長が指名する委員がその職務を代行する。
 前項第 2 号の委員は、委員長の推薦を受けて理事長が委嘱する。
第 2 号の委員の任期は、2 年とし、再任を妨げない。
第 2 号委員に欠員が生じた場合の補欠の委員の任期は、前項の規定にかかわらず、前任者の残任期間とする。
 委員会は、必要があるときは理事長の了解を得て学識経験者等に出席を依頼し、その意見を聴くことができる。

利益相反・倫理委員会の任務

 委員会は、理事長の付託により次に掲げる事項を行う。

  1. 日本臨床微生物学会役職者(役員、委員等)、事務職員等に対する利益相反 の管理
  2. 利益相反に係る審査
  3. 医学および医療における倫理および利益相反管理に関する情報収集と伝達
  4. その他、目的達成上必要な事項

 理事長は、日本臨床微生物学会事業に関係する第三者組織・団体から医学系研究に係る利益相反(日本臨床微生物学会 COI 申告様式)について審査の依頼があった場合、利益相反・倫理委員会に審査を付託することができる。

利益相反・倫理委員会の議事

 委員会は、委員の過半数が出席しなければ、議事を開くことができない。
    委員会の議事は、出席した委員のうち審議対象案件と利害関係のない委員の過半数をもって決し、可否同数の場合は、委員長の決するところによる。
 委員は、自己の申請に係る審査及び議決に加わることができない。
 委員会は、年 1 回以上を目標に開催することとする。

申告書の提出

 役職者および事務職員等は、所定の利益相反自己申告書(別記様式 1)(以下「申告書」という。)を事務局(電子媒体も可)に提出しなければならない。
 役職者等は、任期を継続しているときは毎年 4 月 1 日現在における申告書を委員会に提出しなければならない。
 役職者等は、就任時等において、申告書を委員会に提出しなければならない。
 役職者等は、既に申告した利益相反状況について新たに管理が必要と思われる COI 状況が発生した場合、原則として8週間以内に申告書を再提出しなければならない。
 申告書は、本人、配偶者及び生計を一にする扶養親族で1枚とする。

審査

 利益相反・倫理委員会は、前条により提出された申告書について、次に掲げる開示基準に照らして審査を行う。

指導等

 利益相反・倫理委員会は、申告者が報告書に開示した金額区分の COI 状況について総合的に審査し、その結果、本会の事業活動を行う上で深刻な COI 状態にあると判断すれば、利益相反管理に関する指導・勧告を行うことができる。
 利益相反申告者は、委員会の求めに応じて、前項の指導・勧告に対する是正結果を報告しなければならない。

審査結果の通知

 利益相反・倫理委員会は、その所掌事務に関する審議の結果について、必要に応じ理事長に報告するものとする。

異議申立て

 利益相反申告者は、審査結果に対して不服がある場合は、委員会に対して、書面により理由を付して再審査を 1 回に限り申し出ることができる。この場合において、委員長は、相当の理由があると認めるときは、速やかに委員会を開催し、当該事項について審査を行うものとする。

情報開示

 理事長は、利益相反審査とその管理にかかる社会的・道義的な説明責任が生じた場合、理事会の決議を経て必要な範囲で情報開示し、適切に説明責任を果たすものとする。

事務

 委員会の庶務は、事務局において処理する。

附    則

 この規程は、令和5年3月9日から施行する。

最終更新日:2023年6月12日
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