日本臨床微生物学会

学会について

理事長挨拶

日本臨床微生物学会理事長就任にあたって

一般社団法人 日本臨床微生物学会
理事長 松本哲哉

 このたび、東邦大学医学部微生物・感染症学講座の舘田一博前理事長の後任として、本学会の理事長に就任いたしました。臨床微生物分野の中心的な役割を担う本学会の理事長として、その重責に身が引き締まる思いです。
 現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴い、検査の重要性はさらに増していると思われます。これほどまでに感染症の検査が社会の注目を集めたことは無かったでしょう。COVID-19の検査を求めて検査所には列をなし、検査キットの不足によって、みなし陽性の判断を国も認める状況となっています。ただし、この感染症の発生当初からPCRなど検査の拡充が求められていたにも関わらず、いまだにニーズに見合う検査体制が整えられていません。その一方で、現場で検査に携わる臨床検査技師の方々の負担が確実に大きくなっていったことも目の当たりにしています。
 もちろん微生物検査の対象はCOVID-19だけではありません。従来からある各種の感染症への検査も気を緩めるわけにはいきません。そのような中で、質量分析(MALDI-TOF MS)やマルチ項目の遺伝子検査、各種POCTなど、各種検査法の開発や導入も進められており、微生物検査を取り巻く環境も大きな変化が生じています。
 感染症診療の大きな課題は、治療を開始する時点では感染症の原因病原体が確定できず、経験に基づいたエンピリック治療をせざるを得ない例が少なくないことです。感染症のさまざまな診断法の研究や検査法の開発は、この課題を解決するために取り組まれてきたといっても過言ではありません。そのような状況において、先に述べた新たな検査法の導入は、問題解決とは言えないまでも、かなりの前進と言えると思います。
 その一方で、グラム染色に始まるスタンダードな方法が全く意味が無くなったわけではなく、観察眼を鍛えれば患者の病態まで読み取ることができます。そのため、学術集会の講演でも技を伝授するようなプログラムはとても盛況となっています。
 このように微生物検査は従来の方法の良さを尊重しながら、新しい手法を取り入れていく取り組みが必要なのだと思います。そのような意味において、現在は微生物検査の変革期にさしかかっており、本学会は今後の臨床における微生物検査のあり方や方向性を決める重要な役割を担っていると思います。
 本学会の会員の皆様には引き続きご意見をいただき、臨床微生物の発展に向けて本学会に積極的に関わって頂くことを願っております。

 2022年2月吉日

最終更新日:2022年3月16日
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