日本臨床微生物学会

ガイドライン・提言

II.現在注意すべき耐性菌の候補と概要

東邦大学医学部微生物・感染症学講座
石井 良和

感染症法の定める耐性菌報告基準

感染症法で6種類の耐性菌が5類感染症に分類されている。その内、全数把握の対象となっているのがバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌とバンコマイシン耐性腸球菌であり、基幹定点把握の対象となっているのがメチシリン耐性黄色ブドウ球菌、ペニシリン耐性肺炎球菌、多剤耐性緑膿菌および多剤耐性アシネトバクター属菌である。その対象となる検査材料と判定基準は表1に示している。なお、基幹定点把握の対象となる医療施設は、内科・外科を持つ300床以上の病院であり、全ての医療施設が対象となるわけではない。また、この報告基準はClinical and Laboratory Standards Instituteのドキュメントに記載されている数値と異なる場合があるため注意が必要である。

厚生労働省 院内感染対策サーベイランス(JANIS) の薬剤耐性菌判定基準

JANISも感染症法と同一の耐性菌を対象として判定基準を設けている(表2)。この内、多剤耐性緑膿菌と多剤耐性アシネトバクター属菌については対象薬剤を感染症法のものより広く設定しており、この基準を採用した場合、感染症法の基準より耐性菌の検出頻度が高くなる。JANISは特定薬剤耐性菌として、カルバペネム耐性緑膿菌、カルバペネム耐性セラチア、第三世代セファロスポリン耐性大腸菌、第三世代セファロスポリン耐性肺炎桿菌およびフルオロキノロン耐性大腸菌を対象としている。この判定基準は、Clinical and Laboratory Standards InstituteのM100-S21に記載されている数値とは異なっている。JANISの基準を用いた場合、NDM-1やKPC-型酵素を産生する腸内細菌科の一部の菌株を捉えることが困難である。したがって、JANISが定めるカルバペネム耐性セラチアの判定基準を改変してカルバペネム耐性腸内細菌科を検出するための判定基準が必要となると考えた。表3にそのための基準を示している。この基準は、Clinical and Laboratory Standards InstituteのM100-S21に記載されているものを用いており、JANISのものとは異っている。

略号一覧(33KB)

(2011.2.18更新)

最終更新日:2010年11月4日
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