緒言:通常の救急診療現場で、CPA症例対応時に空気感染予防策は原則不要であるが、新型コロナウイルス感染が拡大している現状を踏まえ、エアロゾル発生手技による医療従事者の感染曝露リスクを低減するための配慮が必要となる。「救急外来部門における感染対策検討委員会」では、CPA症例に対する新型コロナウイルス感染症対策について、診療資材の不必要な浪費防止を含めた「現実に即応した実行可能かつ具体的な提言」という観点から本提言を行う。
対象症例
ドクターカー、ドクターヘリによる病院前診療を含めたCPA症例
診療時の対応
基本的考え方
(1)心停止前の発熱も呼吸器症状も否定できる場合
- スタンダードプレコーションによる通常対応を行う
(2)心停止前の発熱または呼吸器症状のエピソードが聴取できる場合
- 通常の眼・鼻・口を覆う個人防護具(アイシールド付きサージカルマスク、あるいはサージカルマスクとゴーグル/アイシールド/フェイスガードの組み合わせ)、ガウン、手袋に、N95マスクを追加する
(3)心停止前の発熱や呼吸器症状についての情報が不十分な場合
- 推定される心停止の原因、地域での流行状況、N95マスク等の需給状況を鑑みて総合的に判断する
付記
- 上記の(2)もしくは(3)で感染曝露の危険性が高いと判断した場合、術者・介助者の必要最少人数でエアロゾル発生リスクの高い気道異物除去や気管挿管などの処置を行い、それ以後に診療に参加する人員はサージカルマスク対応とする
- ビデオ喉頭鏡などの非直視下デバイスは、挿管時の術者への体液曝露を低減させ感染リスク低下が期待される(Can J Anaesth. 2020 Feb 12. PMID: 32052373)
- 個人防護具を着用中または脱衣時、眼・鼻・口の粘膜に触れないように注意し、併せて脱衣後の“手洗い・手指消毒”は必須である
- 特に髪を触りやすい方は、キャップなどをかぶることを推奨する
- 保健所への届出や検査は、地域の実情に応じて事前に各施設で対応を協議しておく
例)事後の対応として、原因不明の肺炎ARDSと診断→保健所に相談
2020年3月18日
救急外来部門における感染対策検討委員会
(日本救急医学会、日本環境感染学会、日本感染症学会、日本臨床救急医学会、日本臨床微生物学会 5学会合同ワーキンググループ)
最終更新日:2020年3月24日