日本臨床微生物学会ビオメリュー賞
表現型試験からAmpC産生が疑われたEscherichia coliにおける獲得性ampC遺伝子の保有状況と微生物学的特徴(34巻3号)
新谷 知世 藤田医科大学病院臨床検査部
【講評】
広域セファロスポリン系抗菌薬に耐性を付与する薬剤耐性遺伝子の中でクラスCのβラクタマーゼ遺伝子に着目し、自施設で2019年から2023年の期間に分離された大腸菌株をスクリーニングしてAmpC/ESBL鑑別ディスクによりAmpC陽性と判定された45株を選出して、酵素阻害試験、PCR、全ゲノム解析により耐性メカニズムを調べた。45株中30株は獲得性のampC遺伝子を保有しており、21株がCIT型、9株がDHA型であることを明らかにした。他の6株は全ゲノム解析の結果からプロモーターの変異などにより染色体性AmpCの産生亢進が考えられることを示した。AmpC型のβラクタマーゼ遺伝子は臨床的に問題となる薬剤耐性遺伝子であるが、国内での分布状況に関する情報は少ない。長期間にわたり多くの菌株を収集してスクリーニングを行い、AmpC型の耐性遺伝子ならびに耐性メカニズムを明らかにしたことで、臨床微生物学の分野に重要な情報をもたらした点が評価された。
日本臨床微生物学会日本ベクトン・ディッキンソン賞
市販薬組み合わせによる腸内細菌目細菌を対象としたESBL、AmpC、MBL検出法の検討(34巻4号)
髙山 美奈 愛知医科大学病院感染制御部
【講評】
腸内細菌目細菌で広域セファロスポリン系抗菌薬に耐性を付与する耐性遺伝子の中で、臨床現場で頻度が高いESBL、AmpC、ならびにMBLについて、市販薬剤ディスクを組み合わせることによって、複数の遺伝子を持つ菌株を効率的に検出する方法を考案した。ESBLとAmpCの鑑別に用いるディスクと、MBLの検出に用いるディスクを同じ平板に置き、阻止円の大きさと形から判定する手法で、特にESBLまたはAmpCと同時にMBLを産生する菌株について検出率が高いことを示した。臨床現場では複数の種類の耐性遺伝子を持つ菌が分離されることは稀ではない。そのような菌株を簡便に検出する手法を考案した点が評価された。
最終更新日:2025年5月21日