日本臨床微生物学会

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2023年度受賞者・講評

日本臨床微生物学会ビオメリュー賞

2013年から2020年における都内2次医療機関から分離された Linezolid非感受性腸球菌の分子遺伝学的解析(33巻1号)

伊藤 志昂     東邦大学医療センター大橋病院臨床検査部

【講評】

 Linezolid非感性の腸球菌に着目し、自施設において8年にわたり分離菌を収集して分子疫学解析を行った。期間中にLinezolid耐性株を4株、非感性株を4株分離した。耐性機構を解明するためLinezolid耐性に関わる遺伝子を解析した。その結果、23S rRNA遺伝子の変異とoptrA遺伝子を同定した。optrA遺伝子はプラスミド上にあって接合伝達実験により伝達性があることも示した。国内ではoptrA遺伝子の同定は初めてである。海外で増加しつつあるLinezolid耐性腸球菌に着目し、長期間かけて耐性株を収集して、遺伝子の解析により耐性メカニズムを明らかにした。そして今後国内でもプラスミドを介して拡散の恐れがある耐性遺伝子を初めて同定した。基礎実験をしっかり行うことにより腸球菌について臨床的に重要な情報をもたらした点が評価された。

日本臨床微生物学会日本ベクトン・ディッキンソン賞

Oxacillin の MIC が 0.5~2 μg/mL の Coagulase negative Staphylococcus におけるmecA 遺伝子保有判定法についての検討(33巻1号)

中里恵梨香     自治医科大学附属病院臨床検査部

【講評】

 Coagulase negative Staphylococcusのオキサシリン耐性のCLSIの判定基準について検証を行った。CLSIのM100-ED30では、Staphylococcus aureusStaphylococcus lugdunensisStaphylococcus epidermidisStaphylococcus pseudointermediusStaphylococcus schleiferi以外の菌種についてはMPIPCのMIC値が0.5~2μg/mLであってもmecA遺伝子が陰性の場合があるため、mecA遺伝子またはPBP2’の確認が推奨されている。自施設で分離されたオキサシリンのMICが0.5~2 μg/mLの30株を用いてmecA遺伝子およびPBP2’の検出を行った結果、半数以上の株がいずれも陰性であることが分かった。つまりMICの値だけではオキサシリン耐性を過剰に判定していることを実際に示した。さらに、mecA遺伝子の有無とPBP2’の検出結果は一致していたため、PBP2’を検出することにより簡便に正確にオキサシリン耐性を判定できることも示した。臨床的に重要な薬剤耐性について検査精度の向上に資する重要な情報をもたらした点が評価された。

最終更新日:2024年3月29日
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