日本臨床微生物学会

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2024年度受賞者・講評

日本臨床微生物学会ビオメリュー賞

全ゲノム解析によるESBL非産生キノロン耐性Escherichia coliの分子疫学解析(35巻3号)

吉村 公利 大阪府済生会野江病院臨床検査科

【講評】

 近年増加傾向にありながら知見が不十分であった「ESBL非産生キノロン耐性大腸菌」に焦点を当て、その分子疫学的特徴と耐性機序を全ゲノム解析によって解明したものである。大阪市の急性期病院で分離された124株を解析した結果、主要なクローンはST131(59%)とST1193(30%)であり、ESBL産生菌の動向と類似して特定のパンデミッククローンが優勢であることが示された。ST131ではC1-non-M27クレードが最多であり、キノロン耐性決定領域(QRDR)の変異において、ST131とST1193はそれぞれ特徴的なパターンを有していることが明らかになった。また、調査期間の比較により、ESBL非産生株においてST1193が占める割合が増加している実態も示唆された。従来、キノロン耐性菌の研究はESBL産生菌と関連付けて論じられることが多かったが、本研究はESBL非産生株に限定して詳細なゲノム解析を行い、その分子疫学がESBL産生菌と類似しつつも、ST1193の台頭など独自の変化を遂げている実態を浮き彫りにした。このように、国内におけるESBL非産生キノロン耐性大腸菌の動向を全ゲノム解析により精緻に解析し、薬剤耐性菌対策に資する重要な基礎的知見を提供した点が評価された。

日本臨床微生物学会日本ベクトン・ディッキンソン賞

全自動感受性装置ライサスS4迅速法を用いた基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生菌の抗菌薬感受性検査の検証(35巻4号)

小俣 北斗 医療法人鉄蕉会亀田総合病院臨床検査部

【講評】

 薬剤耐性菌の迅速検出を目的とし、全自動感受性装置ライサスS4の迅速法を用いた基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌の検出性能を検証した研究である。ESBL産生菌を含む128株を対象に基準法のフローズンプレートと比較解析した結果、スクリーニング検査では感度100%(平均6.5時間)、確定検査では感度86%(平均10.8時間)という良好な成績を得た。当初、セフタジジムでMajor Errorが認められたが、吸光度波形の詳細な解析から、特定のESBL遺伝子型に依存したバックグラウンド上昇が原因であることを突き止め、判定アルゴリズムの閾値を改良することで一致率を96%まで向上させた。これにより、約11時間という短時間での高精度なESBL確定が可能であることが示された。本研究の新規性は、これまで評価報告のなかったライサス S4迅速法の有用性を実証し、さらに偽陽性の要因を波形レベルで解明してロジックの最適化まで踏み込んだ点にある。臨床現場に即した迅速性と、技術的課題に対する具体的な改善策を提示し、実用的な薬剤耐性菌検査の発展に寄与した点が評価された。

 

最終更新日:2026年3月12日
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